独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院

足の外科

足の外科

外反母趾

外反母趾とは母趾のMP関節部で足先が外転内旋し第2趾に接するか重なるような変形で、MP関節部や足底部に痛みを生じる病気です(図1, 2)。昔は日本人特有の履き物の習慣があり、特に鼻緒の付いた履き物がこの変形を防止すると言われていましたが、最近はファッションを重視する先の細くなったハイヒールなどを履く機会が多くなり、日本でも若い女性を中心に増えています。

外反母趾① 外反母趾②

外反母趾Q&A

外反母趾はどうして起こるのですか?

外的要因と内的要因があります。外的要因は靴の問題です。外反母趾は10:1の割合で女性に多く発生することもあり、ハイヒールなどのつまさきの幅が狭く踵の高い履き物を履くことにより第1趾の前内側部に荷重が集中するためと考えられています(図3)。内的要因として遺伝的素因もあり、関節の柔らかい人がなりやすく、また足の特徴として扁平足や第2趾に対し第1趾が長いエジプト型の足といったものもあります。

外反母趾③
どれくらいから病的と判断されるのですか?
レントゲンを撮り外反母趾角が15°以上を外反母趾としています。20°未満を軽度、20~40°を中等度、40°以上を重症と判断しているのが一般的です。
何歳ぐらいから発症するのですか?
10代前半の思春期から発生することがありますが、多くはハイヒールを履きはじめる年代からです。受診されるのは30代あたりからで、50代の女性が最も多いようです。
発症を予防する方法はありませんか?

最大の予防法は靴にあります。足先がゆったりとした、靴の中でも指が動かせる履き物を履くようにしましょう。

予防する方法①
入浴後に足趾を広げる体操をしましょう。
予防する方法②
例えば足趾でジャンケンが出来れば問題ありません。
どのような治療法がありますか?

外反母趾が軽度の場合は保存療法をまず行います。足趾の体操を行います。更に装具を装着します。歩行時などに第1、2趾間にはめ込む装具や第1趾を内側にバンドで引き離そうとする夜間装具があります。ただ、装具療法は外反母趾が治ると言うよりも変形を悪化させないという意味合いが強いようです。

変形が進み外反母趾角で30°以上になってきて痛みを伴う場合には手術療法が考慮されます。中足骨遠位骨切り術と中足骨近位骨切り術が良く行われます。当院では第1、2中足骨間角が20°以内なら中足骨遠位骨切り術であるHammond法(図5)を、20°以上なら中足骨近位骨切り術で代表される Mann法を行っています。更に軟部組織の解離術を併用することもありますが症例により異なります。

治療法
入院期間はどれくらい必要ですか?
手術は骨切りですので人工的に骨折を起こさせるわけです。従って骨切り部位が安定するまでは入院が必要です。ただ踵だけ付けて歩くことは可能ですので、踵歩行が出来れば2週間で退院は可能です。一般的には4週間ぐらい必要です。
術後のリハビリについて教えてください
まず2週間はギプスシーネ固定をして骨切り部への負担がこないようにします。抜糸は10日前後で行います。2週で踵歩行を許可します。4週でレントゲンを撮り、骨切り部に特に異常がなければ少しずつ母趾側での荷重を許可します。6~8週で骨癒合が得られてくれば踏み返しを許可します。骨癒合が完了してから普通4~6カ月で抜釘を行います。
再発はありますか?

数%ですがあります。術後も先の狭い靴は履かないように注意します。また、足趾の体操などを行い、再度第2趾の方へ母趾が入り込まないように努力が必要です。足袋型の靴下をはいたり、鼻緒のついた履き物を履くのも良いでしょう(図6)。

再発予防

外反母趾はあくまで病気ですので、治療の対象となるのは痛みを伴う場合です。ただ変形がでてきたからといって美容上の問題だけで手術を希望される場合がありますが、それは間違った考えです。手術の合併症もあるわけですから、安易に考えず担当医とじっくり話し合って治療方針を決めることが良いと思います。