独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院

腎臓がん

病態

腎臓は、背中側に左右一対ある臓器で、尿を産生する、体液バランスを調整する、ホルモン(エリスロポイエチン、レニン、ビタミンD)産生するなどの働きのある臓器です。そして、腎癌とは、腎臓の実質から発生したものです。10万にあたりの発生率は、10人で、男女比は2~3:1と男性に多く、50~70歳台に多く見られます。腎がんの発症としては、喫煙、肥満などの生活習慣病、遺伝因子(von Hippel-Lindau病など)が報告されています。

腎癌の臨床症状には、以前より血尿、側腹部腫瘍、および腎部痛が古典的三主徴として知られています。これらは、腫瘍が大きくなった場合に出やすい症状ですが、最近では、健康診断や他臓器疾患の検査中に偶然発見されことが多くなりました。偶然発見される腫瘍は小さいことが多く、何ら症状を自覚しておられない方が大半を占めておられます。このほか発熱、全身倦怠感、体重減少、貧血、多血症など、腎臓に直接関係のない症状がみられる場合があります。

診断は、エコーやCTやMRI等の画像診断です。腎臓にできる腫瘍性病変の約90%が腎癌と言われています。従って、他疾患との鑑別が困難である場合を除いて、手術前に組織生検による病理診断は行いません。まずは、手術によって、腎臓全部または部分的に摘出して、診断と治療を兼ねることが一般的です。

腎臓解剖図

癌に対する治療の必要性と治療法選択

腎癌の治療法では、手術による腫瘍摘除がもっとも治療効果が高いとされていますので、手術はリンパ節や他臓器に転移があっても、腎に可動性があれば適応とされています。まず、行われる治療です。

腎摘除困難のときや転移の治療には、薬物療法(分子標的薬や免疫療法)、放射線療法があります。

腎癌の進展度分類(日本泌尿器科学会 腎癌取扱い規約より)

T-原発腫瘍

TX
原発層の評価が不明
T1

腫瘍径が7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍

  • T1a 腫瘍径が4.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
  • T1b 腫瘍径が4.0~7.0cmまでで、腎に限局する腫瘍
T2
腫瘍径が7.0cm以上で、腎に限局する腫瘍
T3

腫瘍が主静脈内に進展

  • T3a 腫瘍は副腎または腎周囲脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜を超えない
  • T3b 腫瘍は肉眼的に腎静脈または横隔膜下までの下大静脈内に進展する
  • T3c 腫瘍は肉眼的に横隔膜を超える下大静脈内に進展する
T4
腫瘍はGerota筋膜を超えて浸潤する
腎癌の進展度分類

N-所属リンパ節

NX
所属リンパ節の評価が不可能
NO
所属リンパ節転移なし
N1
1個の所属リンパ節転移
N2
2個以上の所属リンパ節転移

M-遠隔転移

MX
遠隔転移があるかどうか不明
MO
遠隔転移なし
M1
遠隔転移あり

手術治療

腫瘍が4cm以下で腎の外に突出しているときや腎臓が1つしかないとき

腎部分切除術(開放か腹腔鏡による)

癌周囲の組織だけを摘出するもので、術後の腎機能を温存できる利点があります。開放手術か腹腔鏡手術かは、腫瘍の部位や深さ、腹部手術の既往などにより判断します。

上記以外の時

根治的腎摘除術(開放か腹腔鏡による)

副腎を含めて腎臓を一塊として摘出するものです。開放手術か腹腔鏡手術かは、腫瘍の部位や大きさ、腹部手術の既往などにより判断します。

手術治療

腎摘除困難のときや転移の治療には、分子標的薬や免疫療法があります。以前は、免疫療法はよく行われていましたが、現在では、分子標的薬が主として使用されるようになりました。2008年に分子標的薬が使用可能となり、以後、腎癌の予後が改善されています。また、分子標的薬は内服薬であり、癌細胞の組織型などにより使用する薬剤を選択し、外来で経過観察していきます。免疫療法には、インターフェロンやインターロイキンなどあります。当科でも、インターフェロンの使用はまれに行うことがあります。

終わりに

健診などのエコーが、腎癌の早期発見に役立っています。一般に、腎癌は、小さいほど予後もいいので、エコーで異常を言われたら、泌尿器科を受診しましょう。