独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院

膵臓がん

はじめに

膵臓は、胃の後ろにある臓器で十二指腸、脾臓に接しております。膵臓の右側から頭部、体部、尾部と呼びます。膵臓の働きは大きく二つあり、膵液(消化液)をつくることとインスリンという血糖を調節するホルモンをつくることです。膵液は膵管を通り、肝臓から膵頭部の中へ入ってくる胆管と合流し、十二指腸へ開口します。膵臓がんとは、一般に膵管がんのことを指します。膵がんは男性のがんによる死亡の第5位、女性では第4位の原因になっており、罹患数(病気にかかる人数)と死亡数が年間約3万人とほぼ同数となっており、非常に予後が悪いがんと言われています。また、わが国では膵がんになる人の数が増加する傾向にあります。膵がんのリスク因子については、背景因子として家族歴、喫煙、肥満や糖尿病などがあり、膵のう胞性病変(膵臓にできる袋)や慢性膵炎も危険因子とされています。 その他の膵臓の腫瘍としては、内分泌細胞から発生する膵内分泌腫瘍があり、症状や経過も全く異なり、膵がんとは違ったものとしてとり扱います。

解剖

胆道の解剖図

膵がん(膵頭部)CT画像

膵がん(膵頭部)CT画像

症状と診断

膵臓がんの症状としては、腹痛、黄疸(眼球や皮膚が黄色くなること)、背腰部痛、体重減少などがありますが、無症状のことも多いとされています。そのため、進行癌で発見されることが多々あります。また、糖尿病が急激に悪くなることで発見されることもあります。血液中のアミラーゼ値が高値であり、腫瘍マーカー(CA19-9, CEA, Dupan-2)が上昇していると、これらのがんを疑い、腹部エコー、CTなどの画像検査を行います。最終的には、内視鏡による膵液の採取や内視鏡下針生検(直接組織を採取すること)から診断を行います。

外科的治療

膵臓がんは、手術が唯一の根治方法となりますが、膵臓がんと診断されて、手術できる方は約3割と言われています。また、手術ができた患者様の中で再発しない方が10%と言われ、非常に予後が悪いがんです。膵臓の中でのがん発生部位によって手術方法が異なります。

膵頭部がん

膵頭部にがんがある場合、膵頭部だけではなく、周辺の臓器である胃、十二指腸、小腸、胆のう、胆管も合わせて切除する膵頭十二指腸切除術を行う必要があります。周囲のリンパ節も郭清します。最後に食べ物や消化液がお尻側に流れるように、再建手術を行います。

膵頭十二指腸切除
  1. 胃を切離する
  2. 胆管を切離する
  3. 膵臓を切離する
  4. 小腸を切離する
膵頭十二指腸切除
再建方法
  1. 残った膵臓と小腸の吻合
  2. 残った胆管と小腸の吻合
  3. 残った胃と小腸の吻合
  4. 小腸と小腸の吻合
再建方法

膵体部、膵尾部がん

膵体部、膵尾部にがんがある場合は、膵臓の体部・尾部と脾臓を切除する膵体部切除術を行います。この手術法では、再建はありません。その他、がんが膵臓全体に及ぶ場合は膵全摘術を行うこともあります。

膵頭十二指腸切除

膵臓の体部から脾臓まで切除する(点線部分)

膵頭十二指腸切除
再建方法

この術式では再建は必要ありません

再建方法

遠隔転移や主要血管に浸潤を認める進行癌は、根治切除ができないため、上記手術を行うことができません。しかしながら、膵がんが進行し、十二指腸がつまって食事が取れなくなったり、黄疸が出現したりすることがあります。その際は、胃と小腸を吻合したり、胆管と小腸を吻合したりするバイパス手術を行うことがあります。

内科的治療

膵臓がんにおいて治癒が望める唯一の治療法は外科的切除ですが、切除不能膵臓がんに対する治療は抗癌剤治療が標準治療となります。点滴や内服を組み合わせて治療を行います。抗癌剤治療は正常な細胞にも影響が及ぶため、副作用も少なくありませんが、副作用に対しても治療を行います。膵頭部がんによって胆管が閉塞し、黄疸や感染が起きた場合は、内視鏡的治療、経皮的治療(体の表面から肝臓を経由して胆管や胆嚢を刺す治療)を行うこともあります。

放射線治療

膵臓がんに対して放射線療法単独で根治することは難しいのが現状です。手術前に抗癌剤と併用して、主要を縮小させてから切除を行うこともあります。また、切除不能膵臓がんに対し、局所を制御する目的に照射したり、痛みに対する症状緩和目的で照射したりする場合があります。

その他

先進医療として重粒子線治療や免疫療法などがございます。効果の確証にはもうしばらく時間がかかる治療と考えます。